ラスト・ワルツ~柳広司のジョーカー・ゲーム最新作は、幻影と退廃の二大世界
映画化、そしてアニメ化もされ絶好調のジョーカー・ゲームシリーズ最新作は、作者の得意とするテーマが満を持して登場、めくるめく華麗な幻影世界の中でスパイたちが活躍します。メインタイトルを示唆する「舞踏会の夜」は、「ロマンス」でも見事に描かれた華族の令嬢の初恋というテーマを、一夜のダンスシーンに凝縮した珠玉のミステリです。この作者の描く華族社会が本当に生き生きとしていることに加え、若き日のヒロインを暴漢から救った初恋の相手は結城大佐なのか、そして華美なダンスが禁止となる最後の晩に再会の約束は果たされるのか、というともすればメロドラマになりそうな筋立てがまた雰囲気を盛り上げます。ラストに残る苦さと同時に深く満足感を覚えさせられるのは、虚実入り混じるスパイの世界であっても約束は必ず果たされ、かつ読者の期待を裏切ることは決してないからでしょう。そして「楽園の蝶」でもその筆致を存分に発揮したテーマ、映画を主軸とした「ワルキューレ」は全体的に笑える話ですが、なにより舞台がドイツの映画製作所ウーファであり、レニ・リーフェンシュタール等有名な映画人が登場する時点で個人的には満足です。
ありがとう寄稿。
今回は序盤から中盤にかけて、磯兵衛はツッコミ役に回っていて少し新鮮でした。花岡くん程ではないですが、なかなか冴えたツッコミをしていると思いました。
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